花色の月


「…はい」


「良かったわ。花乃ちゃんに会いたがってたの、ずっと妹が欲しかったんですって」



はい?
あたしより年上?なんで?

一瞬『不倫の末、結婚』なんて文字が頭の中を飛び回った。



「ちょっと、何も説明してないの?
どうせベソベソ泣いてて言うべき事も忘れたんでしょ!」


確かにベソベソ泣いてましたけど…

どういう事?



「あのね、勘違いしないでね?
私の連れ子なの。だから花乃ちゃんとは血の繋がりは無いんだけど、お兄さんよ」


「あっ…そう言う……
あの、お父さんって今は園部克也なんですか?」


「はぁ!?それすら言って無かったの!?
そうなの、私が克也さんをお婿に貰ったのよ」



そっか……

改めてお父さんの事を何も知らないんだと言う事に気が付いた。

やっぱり…ちょっと複雑かも……

なんとなく、あたしの心が揺れたからか、那月さんがそっと抱き寄せてくれた。




「小さな美容院の店長してるんだけど、今日は如月くんが来るって言ったら飛んで来たわ」


「はい?」



なんで、那月さんが来るからって飛んでくるの?

那月さんの知り合い?


間抜けな声を出したあたしの隣で、那月さんがまさかと小さく呟いた。

あれ?心当たりあり?



「花乃ちゃーん!お兄ちゃんですよー!」



勢いよく開いたドアから現れたのは、あたしも知ってる人だった。