花色の月


そう言って那月さんはあたしの肩を抱いたけれど、直ぐにベリッと引き剥がされた。


「こ、交際は認めたけどな!目の前でイチャつくのは禁止だーっ!」


だそうです。

苦笑いのあたしと、面白そうにまたあたしを抱き寄せようとする那月さん。

キッ!と那月さんを睨んで威嚇するお父さん。

ちょっとここは誰か冷静な人に登場して欲しい…



「何を騒いでるの。会議室まで聞こえたわよ?」


スーツ姿の出来る女を具体化したような女の人が、ノックもせずに部屋に入ってきた。



「だ、だって~」


「そんな事してると嫌われて、二度と会いに来てくれなくなるわよ?」


「それは嫌だけど……」



うん、なんだかお父さんが駄々っ子に見えてきた。

さてと、この登場の仕方からすると……



「始めまして、副社長の園部久美子よ。
私生活では克也の妻をしています」



あたしに手を差し出す久美子さんの笑顔に嫌味がない事に安心すると、手を取ってこちらも自己紹介をした。



「月守花乃です。今日は突然お邪魔してすみません」


「あら、構わないのよ。
良かったら息子に会ってくれる?」



新しい奥さんが居ることは知っていた。

でも、居るだろうとは思ってても、子供の存在は聞いていなくて、つい体が緊張してしまう。