花色の月


やっと泣き止んだお父さんに促されて、大きなソファーに那月さんと並んで座ると、ハンカチで目元を押さえた。

うっ……


「大丈夫ですよ。綺麗に落ちゃってマスカラ」


「…那月さん、笑えないんだけど」


「おやおや、だいぶ放置していた人に言う言葉ですか?けっこう暇してたんですよ?」




「さてと、如月くんと花乃は面識あったのかい?」


あたしと那月さんの前に、アイスコーヒーを置いたお父さんは、不思議そうに首を捻っている。

泣き顔を見られるのは嫌だからと、社長手ずから用意していた。



「よく会うようになったの、今年の春からですね」


「ほぉほぉ。ところで、なんで桜介じゃなくて如月くんが付き添いなんだい?」


「あのね、桜ちゃんはもう月守旅館に居ないの。
えっと……那月さんとは…お付き合いさせて頂いてます!」


お父さんに言うってすっごく恥ずかしい!

正に清水の舞台から飛び降りるような気持ちで言い切ると、那月さんは嬉しそうな顔を、お父さんはポカンと口を開けた間抜けな顔をしていた。

考えてみたら、自己申告は初めてかも…




「そ…そんな……僕の天使が……」


よろよろと立ち上がって、窓辺に移動すると大袈裟に頭を抱えている。

…お父さんって、こんなキャラだったんだ……