花色の月


次の日の朝は、来なくていいと思っても来てしまうもので、渋々那月さんに連れられて電車に乗った。



「花乃、折角お洒落してるんですから、そんな難しい顔は止めませんか?」


「…変じゃない?」


白いレースのワンピースは、那月さんに買って貰った物だ。

華奢なミュールには、然り気無く白い花が付いている。


「着せてみて改めて思いましたけど、あの写真の雪乃さんにそっくりですね」



お母さん髪をサイドに寄せて緩く編んでいたけれど、あたしは耳の後ろで2つのお団子にしている。

ふんわりと丸くて、とっても髪型は可愛らしいんだけど、似合ってるか不安だ。

お団子にしてくれた明美ちゃんは、似合うって絶賛してくれたけど…



「花乃、私から離れないで下さいね?」


「はい?」


「この間みたいな事は、二度とごめんです」



そう言えば、那月さんから離れた途端に絡まれたんだった。

確かにあれはもう嫌だ。

大して混んでない電車の中では、はぐれる筈も無いんだけど、それでも少し不安で那月さんの指先を、ちょっと握ってみた。



「花乃から来てくれるのは嬉しいんですけどね、出来ればこの方が…」


那月さんはそう言ってしっかりと指を絡めた。

やっぱり人前で恋人繋ぎは恥ずかしい。

でも嬉しいのも事実で、どんな顔をしたら良いのか分からなくなった。

…たぶん、今のあたしは変な顔をしてる筈……