花色の月


「まぁ、淡々と抱くだけ抱いたら、そのまま放置って人でしたしね。ピロートークなんてした事は無いですし、寝顔を見せた事すらありません。我ながら最低です」


苦笑いを浮かべて、さらりと髪をかき上げると、あたしの前に座った。

あの……胡座をかくと、裾がけっこう際どくなるんですけど?



「毎回忘れていた私は、今まで遊びの女は一人一回しか抱いていないと信じていましたが。どうも、記憶力にかなり問題があるようです。人の顔を覚えるって事は今だに不得意ですしね…」


「…あたしの顔も……忘れる?」


「そこまでボケたら、病院で頭を輪切りにしてもらうしかありませんね。
花乃を忘れる事など願っても出来ませんよ」



願いませんけどね、微笑んであたしに手を差しのべた。



「あたし……那月さんの側にいてもいい?」


「居てくれないと困ります。如月那月って男は花乃がいないと何にも出来ないんですよ」


「……ちょっと…ううん、いっぱい嫌だった」


「何がですか?」


「適当でも淡々とでも、那月さんが何回も香澄さんを……抱いてたんだって事…」




那月さんの事を言えないって事は、重々分かってはいるんだけど…