花色の月


「離して……あげられそうに無いんです」


「…離してなんて言ってない……」


「花乃の回りの人まで巻き込んで、花乃が普段どうしているのか知ろうとする程、ストーカー気質なんです」


ストーカー…気質って………

真剣な顔をして言っているのに、何だか言葉のチョイスが…



「あたし……何も知らないの…」


「知らない、とは?」


「那月さんが名前で呼ばれるの好きじゃないとか、本当に切れちゃったらどうなっちゃうのかとか……」


「切れるのは……見せないで済めばそれに超したことはありませんね。
それと、誤解です。私は名前で呼ばれるのが嫌いなんかじゃありませんよ?」


「ぇ…?だって…香澄さんが……」


「えぇ、馴れ馴れしく呼ばれるのが嫌な人には、そう言う理由を付けて名字で呼ばせていたのは事実です」


じゃあ……それって?


「私の、身近な人なんて花乃以外には死んだ師匠か、十夢と桜介しかいませんけどね。みんな名前で呼んでますよ?まぁ、十夢は少々変則的ではありますが」


「…あたし……」


「香澄は、花乃に意地悪をしたかっただけだそうです。私から溺愛されている花乃が羨ましかったと」


それは……どういう?

もう那月さんの事は好きじゃないんだろうか…

それともまだ心が有るから、あたしを嫌うって事?


「昔、何度も彼女を抱いた事あります。
でも、毎回忘れている私の中では毎回初対面で、それを知っていて……苦しかったと…」


それは…苦しいよねぇ……

体まで許した人に、毎回自己紹介から始めなきゃいけないなんて。