「花乃ちゃん、今考えてる事を当ててやろうかぁ?
疑った自分は一緒にいる資格なんてないとでも思ってんだろぉ?」
知花さまは、あたしの心の中を覗いたかのように言うとため息をついた。
「あとなぁ、なっちゃんは消極的過ぎるんだよなぁ」
「私のどこが消極的だって言うんですか」
「だってなぁ、ここで花乃ちゃんが別れようなんて言ったら、自分の過去を悔やんでまた山に籠るんだろぉ?
少しは俺を見習ってみろ。諦め悪いって事にかけてはなかなかの物だと自信があるぞぉ?」
「…そんな事しか自信をもって言えないんですか」
きつめの言葉だけれど、明らかに那月さんの顔には完敗って書いてある。
って事は……
「……ぃや」
「花乃…?」
「那月さんが…居なくなっちゃうのは嫌なの……」
疑って、他の男に自分を投げ出してしまった癖に、虫が良いとは思うけれど…
でも、やっぱり那月さんが居なくなってしまう事には耐えられそうにない。
「花乃……」
「ほら、ちゃんと話するだな。
なっちゃん達がしっかりしてくれねぇと、俺と桜助がまたロミオとジュリエットだしなぁ」
…ロミオが……マッチョ過ぎる気がします…
桜ちゃんは…似合うかも?
あたしが頭の中でお馬鹿な事を考えているうちに、知花さまは部屋を出て行ってしまった。
「……あんな強気な事言ってたのに…」
黙っている那月さんを見て、思わず口から転げ落ちたのは、でこぴんをされた時に添えられていた言葉の事だった。
