無駄に賑やかな小野先輩の言葉が、右から左へと過ぎていく。
いつの間にか肩を抱かれていたけれど、抵抗する事もする気さえ沸いてこない。
このまま、小野先輩にめちゃくちゃにされてしまっても、那月さんは何とも思わないんだろうか……
それとも責任を感じてくれる?
そんな事を思うあたしが、あたしは一番嫌いだ。
仕事が忙しいと言っていたのに、香澄さんとデートはするんだ。
気合いを入れて頑張ります、なんて言っていた那月さんの笑顔が、ポツンと落ちて徐々に広がっていく心の中の闇に飲み込まれていく。
着物の帯を外そうとしている小野先輩の手が慣れている事に、何だか笑いが込み上げてくる。
慣れてないと、どこから外して良いのか分からないからね。
「置いてきぼり同士でさ、楽しもうな?
どーせあいつらも、今頃よろしくやってるんだろうしさー」
よろしく?
フッ、そんな事ないって言い切れないあたしは、那月さんを信頼してないんだね…
指の間からこぼれ落ちていくのは、幸せそうなあたしの笑顔と、慈しむような那月さんの微笑み。
あたしは、どこも変われていない。
また、この男の薄っぺらい言葉にすがって、生きていく事になるんだろうか…
これから先なんて、何も思い浮かばない。
ここで、あたしの人生なんて終わってしまえば良いのに。
