花色の月


「花乃、明美!」


あらあら、おばあ様に見つかっちゃった。

二人して慌てておばあ様の方に向かいながら、ちょっと明美ちゃんの袂を引っ張った。


「ん?」


「ありがとう」


「なんの事か分からんな~?」


「フフッ」



笑ってなんていたからか、おばあ様のお小言はかなりパワーアップバージョンだったけれど、お小言中にもあらぬ方に思考が飛んでしまう。

…明美ちゃん、いつから光さんを呼び捨てにするような仲になってたんだろう?

上の空な事がバレて、余計に怒られた事は言うまでもない。






「ふぅ……女将さんのお説教は長いなぁ~」


「結局仕事が遅くなるっていうね」


明美ちゃんと、痺れた足をつつき合っていると、後ろから小さな笑い声が聞こえた。


「あっ、光さん」


「なんや、お説教くらって足が痺れてるんがそんなにおもろいか!」



食って掛かってる明美ちゃんも、それを流している光さんも穏やかな顔をしている。

うん、この組み合わせはなかなか良いのかも知れないね。



「武さんが、二人とも早く昼飯食べちまえってさ」


「はいはい、食べたくても食べれんかったんや」


「……いいなぁ…」


「何がや?」


「だって、光さん明美ちゃんにはタメ語なのに、あたしには敬語なんだよ?…ちょっと寂しい……」