花色の月


「おい香澄、近くの釣り堀に行くぞ。てかお前らって仲良かったんだなー?元カノと今カノ」


どうにも収まらなくなった時に、角を曲がって現れたのは小野先輩だ。

腹が立つ事を、笑いながら言っているけれど、あたしの事は彼女に出来ないって振った癖に、元カノ扱いしないで欲しい。



「釣り得意なの?私エサに触れないかも~」



誰?って勢いで、態度と声を変えた香澄さんに、開いた口が塞がらない。

女って怖いわ……まぁ、あたしも女なんだけどねぇ…



「まぁ、それなりにー?
てか早く行こうぜ!花乃も暇なら連れてってやるよ」


「暇じゃありません。
お気をつけていってらっしゃいませ」


ふざけてんじゃないわよ。

暇なんてあったら、那月さんの所に行きますから。


あたしの耳元で、早く吐いた方が身のためだ、だなんて脅迫めいた言葉を残して、香澄さんは小野先輩と出掛けていった。




「いやぁ、ほんま怖い女やな」


物陰から出てきた明美ちゃんに驚いていると、うんうんと頷きながら二人が消えていった方を眺めている。


「うん、でも…負けたくないな」


「負けるわけないやろ。もう勝負ついとるしな?」


「ううん、自分の気持ち的に下を向きたくないの。
あたしって、けっこう負けず嫌いだったんだなぁ…」


「フフッ、桜介と一緒やな?
それな、それくらいの強さは持っとかんとな。あの人はモテると思うで~」


…えぇ、そうでしょうとも。