来なさいよ。
って聞こえたのは、気のせいではないだろう。
腕組みをして刺すような視線を寄越すのは、私服に着替えた香澄さん。
返事をして近寄るあたしを見下ろすこの人は、身長がいくつなのか気になった。
……165位かな?もっと有るかも……
別に小さくはないけど、大きくもないと言う平均身長なあたしは、豊満な胸を強調するように腕を組む香澄さんに、頭から食べられてしまいそうだ。
「如月くんは、ここの側に住んでるの?今すぐ案内して」
「出来ません」
「あなたに拒否する権限は無いわよ。案内しなさい。それに私と如月くんは知らない仲じゃ無いのよ?」
馬鹿にしたように鼻で笑うけれど、ここは簡単に折れる訳にはいかない。
「ここの側に住んでいるかも知らないような人を、勝手に連れていく訳にはいかないんです」
「ちょっと、何様のつもり?」
何様でも無いですけど、あたしは那月さんの仕事の邪魔になりそうなこの人を、連れていく気なんてこれっぽっちも無い。
まぁ…会わせたくないっていう思いがある事も、事実なんだけど。
「如月くんに、後で怒られても知らないわよ?
私を案内しないばかりか、ストーカーみたいに言うなんて!」
「…そこまでは言って無いですけど。
でも、その言葉が出てくるって事は、それなりに自覚がおありだって事ですよね」
歯軋りの音がここまでハッキリと聞こえてくる。
…そんなにやったら、歯が欠けそうですけど……
