那月さんの手の上にあるのは、黒くて丸い小さな蓋付きの入れ物だった。
蓋の上には、白い花が螺鈿で描かれている。
「これは……?」
「練り香水です。開けてみてください」
クルッと蓋を回すと、ふんわりと甘い香りがした。
「…いい香り」
「くちなしのエッセンシャルオイルで作ってみました。香りが柔らかいでしょう?これなら付けていても怒られないかと」
「えぇっ!?
これ那月さんが作ったの?」
「えぇ、けっこう簡単なんですよ」
嬉しい。
けど…那月さんの女子力の高さに、悲しさまで沸いてきちゃった…
でも、これでいつも那月さんと一緒の香りを付けていられるんだ。
ギュっと練り香水の入れ物を握り締めて、那月さんを見上げた。
「ありがと……すごく嬉しい」
「喜んで頂けましたか?
あっ、この容器も私の手作りなんですよ。無くなったらこれに足して使ったらいいと思います」
「えぇっ!?那月さん、螺鈿まで出来るの?」
那月さんの出来ない事って…何でしょう?
