花色の月


すっかり温まった体から、ほかほかと湯気が上がる。

服を取りに行った那月さんを待って、脱衣場でバスタオルにくるまっていると、直ぐにロンTが戸の隙間から差し出された。


「半壊の理性を立て直してきますね」


だから、手だけなのね……

やっぱり脱ぎづらかったデニムは、脱衣場にある籠の中に放り込んである。


下着も何もかもびしょ濡れだから、本当にロンT一枚なんですけど……スースーする。

那月さんは普段は和服以外を着ないみたいだけど、やっぱりロンTからも甘いくちなしの香りがした。



「花乃、夕ごはんは食べましたか?」


「……えーっと…」


「分かりました。簡単な物しか出来ないですけど、直ぐに作りますね」


はい、すみません。
今日も何だか食欲がなくて、全くごはんが進まなかった。

脱衣場を出ると、火照った足の裏に板の間の冷たさが心地よい。


「……やっぱり花乃を食べてからで良いでしょうか?」


「だ、ダメ!お腹減ってるから…」


クゥ~

…まるであたしの言葉に同意するように、お腹がなった。