那月さんは、苛ついたと言うよりは、困ったと言うように苦笑いを浮かべながら、あたしの肩をやんわり抱き締めた。
「過去の自分に会えるなら、そんな節操の無い事は止めなさいと叱るんですけどね…」
「ごめんなさい…」
あんな薄っぺらい自信過剰男に弄ばれていたあたしは、どれだけ馬鹿なんだって話だよね…
「こんな事を言うと不謹慎かも知れませんが、実はけっこう嬉しいんですよ」
「嬉しい…?」
「花乃が妬いてくれる事が、嬉しいなんて言ったら怒りますか?」
怒りゃしませんけど…
あたしは真剣に悩んでるのに…
不満が顔に出ていたのか、優しくあたしの肩に回された腕に力が籠った。
「花乃の昔の男を全員回って、一人一人の記憶から花乃を消してしまいたいなんて思う私は異常でしょうね」
「ぇ…?」
「正直……感謝もしていますけど、自分は間に合わなかったのに、花乃をしっかり助けられた光くんが妬ましかったりもします」
クルリとお湯の中であたしを回すと、向い合わせの状態で、そっとあたしの頬に触れた。
「まぁ、私がその場に居たら小野って男は、そのま病院送りだったと思いますけどね」
「那月さん……」
「ですから、妬いているのが自分ばかりでは無かった事が分かって、少しホッとしているんです」
…どうしよう……ここって嬉しいって言っていい所?
