「あたしが……明日死んだら、那月さんはどれくらいで…あたしの事を過去にしちゃいますか…」
下を向くと、那月さんの着流しがお湯の中でユラユラしているのが見える。
那月さんの足の間にある、自分の足をビショビショになったスキニーデニムは脱ぎにくそうだな、なんてぼんやりと眺めた。
「過去に、ですか?」
「うん……あたしのお父さんは…お母さんの事もあたしの事も忘れて、新しい生活をしてるの…」
「あぁ……克也さんですか。
そんな事は考えたく…無いですけどね?
私なら、この身が終わるまでひっそりと、花乃を想って季節の花を手向けて生きていくと思いますよ」
お母さんのお墓に、供えられていた藤の花が頭を過る。
ただ、静かに花を墓前に手向ける那月さんの姿を思い浮かべて気が付いた。
そうして欲しいと思う反面、前を向いて幸せになって欲しいという想いが心の中でせめぎあっていたからだ。
それは……お母さんも、なのかな?
お母さんは、お父さんを恨んだりはしていないのかな?
優しげなお母さんの面影が、恨み何かとは縁遠い優しげな微笑みであたしの心を満たした。
「花乃、香澄に何を言われたんですか?」
「…ぇ……?」
「誤魔化さないで下さいね。
どうせ、花乃が可愛いから苛めてやろうとか思ったあの性悪女が何か言ったんでしょう?」
「……その性悪女と懇意にしてた癖に…」
あっ、思わず本音がポロリと……
溢れた言葉で苛つかせてしまったかと不安になって、そっと那月さんを振り返って見上げた。
