花色の月


「……お母さん、ミミはいい子にしてる?」


月明かりの中、お母さんのお墓に名残の藤を供えようとして驚いた。

花入れには、まだ一日位しか経っていないだろう綺麗な藤の花が咲いていたからだ。


……誰だろう…


お母さんに見せる為にと切ってしまったし、このまま連れ帰るのも何だからと、隅の方に入れさせて貰った。



「お母さん、あんまり来れなくてごめんね。
でも、お月さまに居るのなら、ここに来なくてもお母さんに話が出来るのかな…」


お母さんがお月さまに居るとしたら、いちいちここまで登ってくる必要性は無さそうだけれど…

それでも誰にも邪魔されない環境って言う物は、そんなには訪れないし結局落ち着いてお母さんと話せるのはここなんだよね。




「お母さん……お父さんってモテたんでしょう?
…焼きもちとか…妬かなかった?」



優しく夜風はあたしの頬を撫でていく。

一緒揺らされた藤の花が、微かに音を立てた。



「ねぇ……どうして人は人を忘れて仕舞えるの?」


お父さんには、新しい家族がいる。

お父さんにとって、あたしとお母さんは過去になってしまった。



「…移ろい行く事が……怖いの……」


あたしが死んでしまったら、那月さんはあたしの事を忘れて仕舞うんだろうか…