「なぁに熱くなっちゃってんの?
熱くなるっていう事は、まだあの人の綺麗な所しか知らないのね?寝んねちゃん」
いつの間にか着いていた藤の間の入り口で一瞬止まると、小馬鹿にしたような笑みを落として部屋に入っていった。
…どうしよう………
心の中に黒いシミが出来て、それが徐々に広がって行くような、言い知れない恐怖に足元が揺らいだ気がした。
「那月さん……」
深呼吸をしても、心のざわめきは消えなかった。
「はぁ!?小野の連れの女が、如月さんの昔の女っ!?」
「しー…」
またも声が大きくなる明美ちゃんの口を塞ぐと、頭が痛いと言うように額に手を当てた。
「そんな偶然ってあるん?」
「ねぇ……なんか元はこっちの人なんだって、それで都会に出て小野に会って…って事みたい」
「で、こっちに居る時に如月さんと遊んでたんやな?」
「…そうなるね」
「でも、一晩だけやろ?そんな行きずりの女にどうこう言われて気にする事ないやろ!」
「それが……」
「一晩だけじゃないっ!?」
実は覚えてない本人に聞くのも無意味だからと、知花さまに初めて電話を掛けてみた。
あたしとしては、かなり行動力を伴う事だったんだけど……
聞いた内容は、なかなかショックな物だった。
