花色の月


そんな元気な明美ちゃんの熱気にやられて、なんだかくよくよするのもおかしいような気がしてきた。

やり残した仕事を黙々とこなして、いつの間にか昼前になっていた。

電話番をしていた明美ちゃんに代わって、電話の側にあるお土産物を置いているコーナーで、少し減った物を足していると、直ぐに内線が人を呼んだ。


「はい、いかがなさいましたか?」


『今さ、連れが風呂入ってんだけど来ない?』


取るときも思ったけど、あたしって運がない?

会いたくもない藤の間の小野先輩から、これまた鬱陶しいお誘いの電話。


『なぁなぁなぁ、暇だろ?』


何の根拠があって、そんな事を言うんでしょう?
暇って程じゃないわよ。そろそろお昼を運ばなきゃいけないし…



「いえ、皆様のお食事の支度がありますので」


『じゃあ俺んとこに持って来てくれる?ってか決定みたいな?』


…切っても良いだろうか……

第一、お連れさまが居ないからって昔遊んで捨てた女を呼び出す神経はいかがな物かと。


『てかさ、もう少し喜べよ。お前の事声ですぐ分かったぜ?』


ぶっ飛ばして来ても良いだろうか?

どこをどう喜んだら良いのか、さっぱり分からないんですけど。

イライラして受話器を投げてしまいそうだ。


『ちょっと黙るとか無しな?
てかさ、携帯の番号教えろよ?お前替えた後俺に送り忘れてるぞ』


ある意味すごいかも。
送り忘れてるんじゃなくて、敢えて送ってないって考えには至らないのね?

それにしても運がない。
電話は、おばあ様の部屋にも付いていて、こっちは子機みたいな物だから、おばあ様が留守の時だけ電話番をするんだ。

おばあ様、早く面接終わらないかなぁ…



「そろそろお食事の時間ですので、失礼致します」