花色の月


苦笑しながら言う光さんの言葉に、小野の奴が思いっきり頭を殴られているのを想像した。


「フフッ…して欲しいかも」


「同感です。私としましては斧(おの)でやって欲しいですけどね」


「…それはやり過ぎっすよ」


光さんの言葉にあたしが笑うと、その場の空気が少し柔らかくなった気がした。

それにしても、光さんの言う通り斧はやり過ぎだよね。

まぁ…ぴったりだけど。


那月さんに手を引かれてあたしの部屋に向かう。

部屋に入ると、二人で並んでベッドに座ると、ただ黙ってあたしを抱き締めてくれた。


「あたしね…
…少しは変われたつもりだったの…でも……ダメなの、こんなあたしなの」


あいつに組み敷かれたら、あの頃の惨めな自分に戻っていた。

怖くて、嫌だなんて言えなかった…あの頃に。



「花乃、私はこの年になっても、新しく人に会うのは怖いんです。仕事で会わなければいけない時以外は山の中に籠ってるんですよ」


…那月さん?

真剣な声に、下手に声を出すことも出来なくて、ただ黙って聞くことにした。


「そんな私を情けないと嫌いますか?」


「そ、そんな事っ!」


「無いですよね。私もそんな事で花乃を嫌ったり等しませんよ」


那月さんは分かってたんだ。

あたしが、変われてない惨めな自分だったら、那月さんが離れて行ってしまうんじゃないかと不安だった事を。