花色の月


「あぁ……花乃…無事でしたか…」


那月さんはこちらを見ると、まだ整わない息であたしを呼んだ。



「花乃、未遂……ですよね?」


コクンと頷いたあたしに、ホッとしたのかそのまま近付いてきてあたしを抱き締めた。


「ふぅ…良かった。
光くんありがとう、助かりました」


「いえ、若女将が無事で何よりっすよ」


那月さんの胸に抱かれて、やっと息が出来たような気がした。

光さんが来てくれても、なかなか息が詰まったようになったのは変わらなくて、やっぱり那月さんの腕の中は特別みたい。


「…くやしい……」


「悔しいですか?」


「…全然抵抗出来なかった……声さえ出せなかった……」


今になってまたあふれてきた涙が、那月さんの襟元を濡らす。

悔しい…あんな奴に触らせてしまった。

あいつの手の感触を思い出して、気持ち悪さに身震いをする。


「……光くん、少し花乃が抜けても大丈夫でしょうか?」


「あぁ、慌ただしい所は過ぎましたから、大丈夫っすよ。女将さんにも言っときます」


「お願いします。後、明美さんにも藤の間の方は要注意って伝えといて下さい。節操無さそうなので」


「一応全員に言っときます。
まぁ…明美ならお盆で殴るとかしそうっすけどね……」