花色の月


「花乃綺麗になったなぁ」


「…え……?」


何やらニヤニヤしている明美ちゃんと、仕事の後の一服を縁側でしていた。

一服と言っても、どちらも煙草は吸わないから煎茶と福田屋の苺大福だけど。


「如月さんは、花乃を大切にしてくれてるんやね」


「うん」


それは間違いないと思う。
いつも、あたしの事を考えてくれる那月さんは、ただいま仕事場に籠り中。

ちょっと大きな仕事が来たんだと、張り切っていたから邪魔をしないように会うのは控えている。

…ちょっと寂しいけど、これは仕方のない事だと思う。



「本当に良かったなぁ」


自分の事のように喜んでくれる明美ちゃんに、少しうしろめたい気持ちが沸いてくる。

…だって、明美ちゃんはもう会いたくても会えないんだから……



「花乃、あんたが何を考えてるかは分かるんやけど、そんな気にせんといて?気を使われるのにもいい加減疲れたからなぁ」


後半をおどけて言って見せる明美ちゃんは、本当に強い人だと思う。

あたしだったら……那月さんを失った瞬間に自分も後を追いそうだ…

言ったら絶対に怒られるから言わないけど。



「あたし…少し怖いの…」


「何が?」


「あんまり幸せだから、この先悪いことでも起きるんじゃないかなって…」


「あぁ…それは分かるかもなぁ。
せやけど、そんなん考えて今を楽しめなかったら、折角の幸せな時間が勿体ないで?」


そう言って笑って見せてくれる明美ちゃんは強いんだね。

あたしは、まだまだ跡継ぎとしても頼りなくて、頑張らなきゃいけない事でいっぱいだ。