花色の月


「…失礼な奴だなぁ……
潰れちゃいないさ、翔と瑠璃が居れば十分回せるからなぁ?」



「でも、十夢の店だろ?
十夢が居なかったらトム・ソーヤじゃなくて、ただのソーヤじゃないか」



…なんの話なのかさっぱり分からない。
知らない名前が出てきたけれど、それが二人の共通の知り合いだと分かると、また心がチクリとした。



「まぁ、いんだよ。
俺よりか、翔の方が向いてるしなぁ?」



「…まぁた、そうやって……

小動物元気にしてる?」



「あぁ、相変わらず翔に溺愛されてるよ」



……?

分からなくて首を傾げていると、桜ちゃんがこちらを見た。



「そっか、花乃は居なかったもんね。
何だかね小動物って感じのちっちゃい奴を、十夢が連れて来たんだよ」



「あのちっささが可愛いんだけどなぁ?」



「そうだね、ポケットに入れときたくなるね」





えっと…なんの話しかさっぱり分かんないんですけど…?




「ほら、これが小動物」



ヒラリと目の前に置かれた写真には、可愛らしい女の子と綺麗な女の人、そして何人かの男の人が写っていて、その中の一人は今隣にいる知花さまだった。

桜ちゃんがポケットに入れときたいって言った女の子の 、キラキラと輝く大きな瞳も、天真爛漫な笑顔も、あたしには眩しすぎて悲しくなる。



「そんで、これが翔」



桜ちゃんが指差す先には、茶色の髪に緩くパーマを掛けた、桜ちゃんとは違う感じで中性的なイケメンさんがいた。

…身長高そうだけど……