花色の月


「あっれ~?泣いてんの?」


「ゴメン、あー怪我しちゃったね。
ちょっと入って傷の手当しよっか」


「ププッ、傷の手当って…
そのあと何するつもりだよー」


「なにってナニ?ギャハハ」



あぁ……変なのに絡まれちゃった。
でも、抵抗する気力も沸いてこない。

このまま、こいつらに連れてかれちゃっても、那月さんは気付かないのかな…



「サッサとその手を離しなさい」


那月さんの声がして、戻ってきてくれたのかと嬉しくて顔を上げた。

ぇ…?めちゃめちゃ怖い顔なんですけど…

那月さんの迫力に、あたしの事を抱えようとしていた男がビクリと体を震わせた。


「薄汚い手で、触るなと言ってるんだ。
それとも、二度と使えないようにされたいか?」


え?な、那月さん話し方違いますけど…?

あまりの迫力の違いに、あたしを掴んでいた手もその他の奴らも、じりじりと後ずさるとしばらくして一気に走り出した。

ホッとして、また下を向くとけっこうしっかり擦りむいた膝っ小僧が痛々しい。

…見たら余計に痛くなったかも……


白いワンピースは汚れてしまって、少したけれど血までついてしまっている。

それが何だか今のあたしみたいで、悲しくて切なかった。


「わっ!」


いきなり抱き上げられて、那月さんの顔が至近距離にあることに心臓が飛び跳ねた。

まだ、怒っているみたい…

そりゃそうだよね……取り繕おうとして出来なくて、挙げ句の果てちょっとの間に絡まれるとか……こんなめんどくさいの誰だってごめんだよね…



「…自分で歩けますから……」