花色の月


「悪いのは私です。過去に犯した過ちは消えません。
許してくれとは言いません。……でも、お願いですから私に作り笑いをしないで下さい…」


「ぁ…」


「罵倒されてもなじられても構いません。
ですが、それだけは…………」


那月さんの瞳が今にも泣き出しそうに揺れていて、取り繕おうとしたあたしの浅はかな思いは、余計に事態をこじらせる事になってしまった。


「…ごめんなさい……」


「花乃が謝る事は無いんです、悪いのは私ですから。

……帰りましょうか」



ゆっくりと前を歩く那月さんの背中が遠い。

さっきまで、あんなに身近に感じていたのに……

止めることも出来なくて、頬を伝う涙を那月さんが見なければそれでいいと下を向いた。


……あそこで、どうするのが正解だったのか…


顔を上げると、少し先に愛しい人の後ろ姿が見える。

駆け寄って抱き付きたいのに、それは出来そうもなくて、また下を向いた。


…どうしたら、いいんだろ……







下を向いて歩いていたからか、わざとらしくぶつかってきた奴らのせいで、思いっきり転んでしまった。