花色の月


「…いいんですか?」


「えぇ、私が花乃に着せたいだけですから」


あたしが着替えている間にも、沢山選んでいたらしい那月さんは、それらが入ったショップバックを持っている。

それまで全部買って貰ってしまった。



「気にしないで下さい。
普段基本的にお金って物を使わないので、実は私は小金持ちなんですよ」


ありがたいことに焼き物の注文は途絶えませんし、と笑って見せる那月さん。

まぁ、畑で野菜を作って鶏を飼っていて食べ物は殆ど自給しているみたいだし。

外部に買い物に行くのは、基本的に焼き物の材料を買いに行くときくらいだと前に言っていた。



「ねぇ、那月さんって粘土を何で運んでるの?
まさか……バスで?」


「流石にそれはバスの運転手さんに怒られますね。
実は、オンボロの軽トラがあるんですけどね?ちょっとデートには不向きかと思って今日はバスにしてみました」


「リヤカーとかかなって……」


「リヤカーも有りますけどね、流石に町からリヤカー引いて帰るのはしんどいですよ。十夢ほど馬力はありませんしね」


確かに、知花さまなら粘土担いで帰ってこれそうだけど…


「でも、那月さんもかなりマッチョよね?」


「まぁ、体力はあって損はしませんしね」


お昼はどこで食べようかと、色んなお店を覗いてみる。
なかなか決まらないのに、手を繋いで二人で歩いていればそれだけで幸せな気持ちになれるんだ。

やっと入ったイタリアンは、石窯で焼くピッツァが売りのお店で、内装もお洒落で可愛い!

テンションが上がったあたしと、そんなあたしを穏やかに見ている那月さんの後ろから、女の人が声を掛けてきた。



「あれ~?如月くんじゃない久しぶり。
今日のお相手はその子なの~?」