花色の月


あの……那月さんの顔が険しくなって向こうをむいちゃったんですけど…
それってあたしの格好が、目も当てられないって事ですか…ね?


「花乃、それにしましょう。
あとは、これとこれとこれを。あっ、今着てるのは値札取って下さい。そのまま着ていきますから」


な、那月さん…その笑顔怖いですよ?
ほら、店員さんも顔をひきつらせちゃって、大慌てでレジに向かってますけど?


「…変ですか……?」


「とんでもない!あんまり可愛すぎるんで見惚れてしまいました。なのに…」


「え…?」


「先に似合うと言われてしまったのが癪なんです。器が小さいもので」


「良かった…」


ホッとして、値札を切って貰いながら那月さんを見上げた。



「花乃…?」


「似合わなすぎて…言葉もないって感じなのかなって」


「何を言ってるんですか。
私が花乃に見立てたんですよ?似合うに決まってるじゃないですか」


甘い甘い微笑みを貰って顔が赤くなったのは、あたしだけじゃないみたい。

値札を切ってくれてた店員さんも、那月さんの色気に当てられちゃったんだね。


お店を出る時に、後ろで見送ってくれた店員さん二人の表情は、面白いくらいに対称的だった。

一人は那月さんに怯えて、もう一人はポーっと骨抜きになっいて………
うん、何だか気に食わないから忘れてしまおう。