花色の月


軽快なやり取りを聞きながら、鏡の中のあたしが段々垢抜けていくのを眺めていた。

…長さなんかは殆ど変わってないのに、明らかに違って見える。

美容師さんってすごいなぁ……


最後はトリートメントをして貰って、何故かメイクまでされてしまった。


「う~ん、これは可愛すぎる!
うちに置いてってくれないかな?」


「寝言は寝てから言って貰いたいものですね」


「残念だなー、写メすら撮らせてくれないし…」


「当たり前です。私ですら写真は持ってないって言うのに、なんで貴方にあげなければいけないんです?」


「はーい、はい。独占欲強すぎると振られちゃうよ?
もし如月が嫌になったら、俺が受け止めてあげるからね!」


…えっと、それはあたしが受け止めて貰えるんでしょうか?
それとも、那月さんを受け止めるって話?


「さて、もう用は無いので行きましょうか」


「あっ、はい。えっと…予約なしで飛び入りしてすみません!ありがとうございます」


「あーっ!!可愛すぎる!
やっぱ、この子ほしーなー!」


「三枚におろして窯で灰にしますよ」


な、那月さん……怖いですったら…

店長さん?に手を振られながら店を出ると、あたしを見下ろす那月さんの甘い視線がくすぐったい。