「さて、最初は美容院にしましょうか」
バスから電車に乗り換えて、一番近くの町に向かいながら、先ほどのあたしの思いを覗いたような事を言った。
「えっと……」
「大丈夫です。私の知り合いの所ですから、切ってる間も私が隣にいます。それでも嫌ですか?」
「那月さんが居てくれるなら…」
ちょっと不安だけど、せっかくのデートだもんね?
ちょっとでも綺麗になりたいって思うのは、女の子として当たり前の事。…だと思う。
他愛もない話をしながら、電車での時間を楽しむと、目的の駅に着いた。
………
「…那月さんって、やっぱりモテるんだね」
「はい?」
まさか気が付いてない訳はないと思うんだけど…
すれ違う女の人に二度見されたり、ついでにあたしが睨まれたりって事が何度となく繰り返されている。
「あっ、ここです」
那月さんが足を止めたのは、駅から程近いお洒落な美容室。
那月さんはともかく、あたしはとっても場違いな気がするんだけど……
「いらっしゃいませ……あれーっ?如月じゃん!」
「予約はしてませんが、来て差し上げたんですから、それ相応のもてなしはありますよね?」
那月さんが、とんでもなく上目線なんですけど…
「もっちろん!」
