花色の月


「なんか…いつもと違うから……」


「あぁ、着流しでも良かったんですが、かなり目立ちますからね。花乃の服を見るのがメインですし、洋服にしましたが……嫌ですか?」


いつも通りに見えるけれど、漆黒の瞳の中に少しだけ不安げな色を見た。


「ううん、違うの……
いつもの那月さんも好きだけど、洋服の那月さんも素敵だよ?ただ…慣れなくてドキドキしちゃうだけ!」


もう最後は自棄っぱちだ!
言い慣れない言葉を口にするだけで、かなりエネルギーを消費してしまった気がする…


「花乃に可愛いワンピースでも見つけましょう。そして、桜介の服からとっとと着替えて貰いたいですね」


「…ん?」


「桜介が着ていた物を花乃が着ているのかと思ったら、あまり気分は良くないので」


なんか嬉しいけど、桜ちゃんが聞いたらバイ菌扱いするなって怒りそうだね。



「あと、私がいつも調合してもらう香水のお店にも行きましょう」


「…え、じゃあ!」


「花乃にも差し上げますけど、仕事中は付けられないんじゃ無いですか?」


「ぁ……」


「同じ香りで、もっとほのかに香るものにしてもらいましょう。私の移り香くらいなら許されるでしょう?」


イタズラっぽく微笑む那月さんは、そう言ってあたしの髪に触れた。

ふわふわと那月さんの長い指先で揺れる髪は、実は自分で切っている。

だって……美容院って苦手なんだもん…