花色の月


置きっぱなしになっていたらしい、桜ちゃんのシャツとジーンズを身に付けて、奥に行ったっきりなかなか戻ってこない那月さんを待つ。

桜ちゃんの服なら、ベルトで止めれば着れない事はない。



「お待たせしました」


「な、那月さんっ!?」


「洋服を着るのは久しぶりですね」



あたしと同じシャツにジーンズって格好だけれど、着流しと違って長い足が強調されてまるでモデルさんみたいだ。


「…那月さんが、着流し以外を着てるの初めて見た……」


「フフッ、昔は着流しなんて着てませんけどね?」


「…それは、よく覚えてないもん」


「さぁ、行きましょうか。バスの時間が有りますし、そろそろ出た方がいいですね」


洋服を着た那月さんは、長めの髪を後ろで軽く結んでいる。

何だか慣れなくて、余計にドキドキしてしまう。


思ったより早い時間に起きたから、あたしが動けるようになった今もまだ朝と言える時間だ。

やってきたバスには誰も乗っていなくて、一番後ろの席に並んで座る。



「どうしましたか?」