花色の月


「…雨上がりで……虹が………」


「……覚えてて…くれてたんですね」



じゃあ、あたしが溺れた時が初対面じゃないじゃない。

あっ…だから、お見舞いにくちなしの花をくれたの?

だから、今もくちなしの香りを付けてくれているの?



いつの間にか、顔を上げていたあたしは、柔らかな微笑みを浮かべる那月さんを、ただ黙って見つめていた。



「たまに、見てたんですよ?
あっ…ストーカーとか言わないで下さいね」


「…ストーカー……」


「…ですよね。反省しています」


「那月さん、ありがとう」


あたしは、その頃ずっと桜ちゃんしか見てなかっただろうに、こう言って貰えるともっと早く出逢いたかったと思ってしまう。

…いや、出逢ってはいたんだけど……



「まぁ…初恋は実らないって言いますし。
決して操を立ててた訳じゃないですから、今まで言わなかったんですけどね」


「そーですよね。
知花さま並みに遊んでたって聞いたしー」


「…十夢ですか?」


「ううん、桜ちゃんと武さんと光さん」



サラリと髪をかき上げながら決まり悪そうに苦笑を浮かべてる那月さんに、べーっと舌を出して見せた。


あたしも、人の事言えないけどねぇ…