花色の月


「…うん、この枕なにが入ってるの?」


あたしの枕はフカフカの羽毛枕だけれど、この枕はもっと重くてザクッとしている。

それに何だかひんやりしてて心地よい。


「そば殻ですよ。なかなか良いでしょう?」


ふぅん、そば殻の枕ってなかなか良いかも……

さっきまであたしの枕は那月さんの腕だったから、この枕を使ってたのは那月さんだ。

ほのかな甘い移り香が、また安心する。



「…那月さん」


「なんですか?」


「那月さんの香水…欲しい……」



枕に顔を埋めたままだから、那月さんの表情は分からない。

しばらくの沈黙の後、那月さんの声がした。




「少し昔話をしても…いいですか?」