…なんだか…とてもあったかい……
ギュッと引き締まった体に抱き付いたところで、声が聞こえた。
「花乃、そんな可愛い事をしていると、また食べちゃいますよ?」
「……?」
やっと眠りから覚めたあたしは、自分が何も身にまとっていない事に気が付いた。
…薄掛けは掛けているけれど、その下にいるあたしと那月さんを隔てる物は何もない。
「ん~……食べて?
…って言いたいとこですけど、そろそろ帰らないと…」
「おや、花乃は悪い子ですね。煽るだけ煽って放置ですか?」
それより朝からそんなに爽やかな那月さんが不思議です…
起き上がって伸びをする那月さんを、ぼんやりと眺める。
着痩せするらしい那月さんは、知花さま程じゃないけれど、かなり筋肉質だ。
粘土を捏ねるのも、登り窯の薪を割るのも、夜通し火に薪をくべる窯焚きも、どれも体力のいるものだそうだ。
あたしもそろそろ起きなければと体を起こそうとして、余りの気だるさにもう一度布団に逆戻りしてしまった。
…那月さん…が容赦無いから………
「まぁ、そろそろ帰った方が良い時間なんですけど、花乃立てますか?」
「……那月さんの意地悪」
立てませんともっ!
どうしてくれるのよ!これから仕事だって言うのに…
「先程電話しましたら、今日は臨時の休みを下さるそうですよ?」
「…嫌な予感がしますけど……誰に電話を…?」
「そりゃあ、月守旅館の女将さんにですよ」
…それって……恥ずかし過ぎない?
