花色の月


どうせ童顔だもん…

色んな所で免許証を提示しないといけない自分の顔は、あんまり好きじゃない。

でも、嫌いじゃないのは、桜ちゃんと似ているから。




「かっわいい顔して、これが地毛何だもんなぁ?ふわっふわだ」


なんのためか近付いてきた知花さまに、あたしは思わず後ろに身を引いた。


ふわりとあたしの髪に触れた手は、するりとあたしの頬を撫でた。

うっすらと笑みを乗せる唇も、いたずらっぽく輝く瞳も、一瞬で人を自分の虜に出来る事を知っている人のもの。



「なぁにやってんの?白昼堂々と」


「なぁ、この眼鏡度入ってねぇなぁ?」


「ぁ……返し…」



あたしは人前に出るときは、素通しの眼鏡を付けている。

これを付けていれば壁があるみたいで少し安心出来るし、こうしてれば学校でも少しは虐めの手が緩んだから…



「せっかく可愛い顔してんだから、わざわざ隠さなくてもいいのになぁ?」


「あっ、それもっと言ってやって?
なんだか知んないけどさ、中学くらいから家族の前以外は眼鏡かけるんだ」


「…ぁ…あの……」



返して下さいよぉ…