花色の月


「花乃寝たの?」


「えぇ、疲れてたみたいです」


花乃ちゃんと居なくなった筈のなっちゃんは、意外と早く戻ってきた。

まぁ明日も仕事が有るしと、もう宴は解散していたけどなぁ。



「朝まで飲みますか?」


「まぁ、飲んでもいいけど?」


「おい、桜介はもう止めておけ」



只でさえ、アルコールには弱いんだからなぁ。



「うるさいなぁ!僕はまだ飲めます~」


「…完璧酔ってるじゃねぇかよ」



もう缶を持つ手が傾いてるじゃねぇか。

ふわふわと俺の方に歩いてくると、ぺたんと畳に座って何故か俺にまで飲ませようとする。


「なんで、そんな度数で酔うんですかね?」


「……経済的だよなぁ」


缶を取り上げた俺をポカポカ叩いていた桜介は、そのまま膝枕で寝始めた。

そのふわふわの髪を撫でていると、なっちゃんもプシッと缶を開けている。

まぁ、あんな事を言ってるなっちゃんも、言う程には強くねぇんだけどな。



「さて、十夢と桜介の門出に」


「…俺はビールが良いんだけどなぁ?」



桜介から取り上げた桃のチューハイを、なっちゃんのビールの缶に軽く当てながらぼやいた。

そんな俺を尻目に、うまそうにビールを飲むなっちゃんは何故か楽しそうに見える。

…おい………




「それじゃあ取りにいけないでしょう?
物欲しげな十夢を肴に飲ませて貰います」


「…なっちゃん、性格悪りいぞぉ?」