花色の月


手を離そうとしたあたしを、那月さんが優しいけど有無を言わさぬ強さで引き寄せる。

でも、本当はそうして欲しかったあたしは、大した抵抗もせずに那月さんの腕の中にすっぽりと収まった。



「わぁ、見せつけてくれるねぇ。
俺もイチャイチャしてぇなぁ…」


まだこちらに戻ってきそうもない桜ちゃんを見て、知花さまがぼやいている。

桜ちゃんあんなに飲んで大丈夫なのかな?
それにしても、明美ちゃんは酒豪みたいだ……おばあ様も弱くなったとか言いながらも、明美ちゃんと同じくらい飲んでいる。

あたしと桜ちゃんがお酒に弱いのは、下戸だったおじい様譲りらしい。

…しかも、今日は那月さんに止められていて、さっきも桃のネクターで乾杯した。




さて、くっついているあたし達を見ながら手持ち無沙汰にズルいなんて言っている知花さまを

完全に無視した那月さんが、あたしの髪をくるくると指に巻き付けながら聞いてきた。


「辛くは無いですか?痛みは?」


「大丈夫、でも……」


「でも?」


「もうちょっとこうしてても……良いですか?」


だって、那月さんの腕のなかは安心するんだもん。

回りの人達も酔いが進んで、そんなにあたし達の事なんて気にしてないと思う。

……たぶん…