花色の月


「うん、甘える」


「聞き捨てなりませんね。
なんで花乃が十夢に甘えるんですか?」


何とか武さんを引き剥がした那月さんが、あたしの隣に座りながら不満げな顔をした。

でもね、知花さまに言われて分かったの。

その不満げな顔の裏に、不安な想いを押し隠してるんだって。



「違うよ、知花さまに甘えたりしたら桜ちゃんが妬いちゃうじゃない」


「花乃…?」


そっと着流しの袂を摘まんで、那月さんを見上げた。

あたしが甘えるのは、あなただよって……想いを込めて那月さんの瞳を見つめる。



「花乃……どこでそんな技を習得してきたんですか?」


「技…?」


「襲いたくなるじゃないですか」


そ、そう言う事を涼しい顔で言わないで下さいっ!

あたしの心臓が、口から家出しちゃうじゃない!