花色の月


ここを捨てるんじゃなくて、ここから旅立つだけなんだ。

花乃のお陰で、みんなに祝福されて出掛ける事が出来る。

だから、いつでも帰って来れるんだね。



「十夢、明日は何処へ行く?」


「フッ、懐かしいフレーズだなぁ?
明日からしばらくはトム・ソーヤだ」


いい加減戻んねぇと、翔に切れられるからな。
そんな事を言いながら笑う十夢を見て、僕はまだ行った事のない十夢の店を想った。

うん、小動物にも会えるし、取り合えず十夢の店でウエイターでもさせてもらおう。


「お前の部屋も、暗室もあるしなぁ」


「ぇ…?」


「まぁ、お前の部屋って言ってもベッドはねぇけどな。寝るのは俺の部屋だ」


あぁ、どうしよう…嬉しすぎて視界が霞むじゃないか。

十夢は僕にはそんな事、一言だって言わなかった癖に。


「瑠璃も喜ぶ。あいつの愛読書は月守桜介の写真集だぞぉ?」


「フフッ、小動物喜んでくれたんだね」


「あぁ、俺の本棚にあるのまでちょいちょい持ってっちまう」


ぼやきながらも十夢も何だか嬉しそうで、小動物を可愛がってる事がよく分かる。

…何でかな…小動物には妬かないんだよね…
やっぱり、ペットだからかな?