「ちゃんと、花乃に謝りい」
明美は、少し気まずそうに涙を拭うと、さっと部屋を出ていった。
僕の頭の上に手を置いた十夢が、直ぐに後を追っていく。
悠は……僕と十夢の共通の友人だった。
だから、今の状況では十夢が慰めに行くのが丁度いいんだと分かりながらも、チクリと胸の内が痛んだ。
「…桜ちゃん……あたし、何も知らなかった…」
「当たり前だよ。僕達も明美も言わなかったんだから」
それでも、切なそうな顔をしてうつ向く花乃は、倒れたせいかとても儚げに見える。
たぶん、僕が花乃の心を砕いてしまったんだ……
「花乃…ありがとう」
「桜ちゃん…?」
「今まで選べ無かったんだ。優柔不断だからさ…
でも、花乃に背中押して貰えたから、行くね?」
「桜ちゃん…あたし、桜ちゃんを追い出したい訳じゃないよ?」
不安げにゆれている瞳を見つめながら頷いた。
「知ってる。さっきはどうかしてたんだ。
十夢から明日立つって言われて、頭の中がゴチャゴチャになってた」
「…うん」
花乃を支えていた糸が切れてしまったみたいだ。
でも、もう僕が手を差しのべるのは違うんだよね?
