怒りと悲しみに、ぐちゃぐちゃになった明美の瞳を見て、改めて自分の不甲斐なさを痛感した。
「うん…ごめん」
明美の恋人は、亡くなっている。
その頃外国にいた僕らは、悠の訃報を受けとるのに時間が掛かってしまった。
駆け付けた僕らの目に映ったのは、虚ろな瞳をひたすら過去に向ける明美だった。
ただひたすら、アルバムのページを捲っていたのを覚えている。
その事故で明美は最愛の人と、二人の間に生まれてくる筈だった命を……喪った。
幸せの絶頂から、不幸のどん底に……
そんな明美に、僕は月守旅館に来るようにと何度も言ったけれど、その時の明美は首を立てに振らなかった。
ずっと気に掛かってはいたけれど…
まさか、今頃になって僕の紹介状を持って現れるとは思っていなかったんだ。
…悠が死んだのは、今から5年前の冬の事。
結婚式の1週間前だった…
