花色の月


「花乃は、先程目を覚ましましたよ」


どうやら那月は、花乃の所にいってから僕らの所に来たらしい。


「土下座でもして謝るんですね。十夢も」


まさか、これだけで那月に開放されるとは思っていなかったから驚いた。

…後からひっぱたくとか言わないよね?


「言いませんから。早く行きなさい」


しばらくしたら私も行きますから、と席を外してくれるみたいだ。

ありがたく小桜の間に向かう。

そう、倒れた花乃を一番近かった小桜の間に運んだんだ。


部屋の前に着くと、極度の緊張に手が震えた。

花乃に拒否されたらどうしようと不安になって気が付く。
花乃は……僕に全てを拒否されたと思ってるんじゃないだろうか…



「花乃ちゃん、入るぞぉ?」


十夢に背中を押されて部屋に入ると、保冷剤で頭を冷やしてる花乃と、心配そうな顔をした明美がいた。


「花乃……ごめん」


「ごめんね?桜ちゃん。
あたし、桜ちゃんの気持ちを考えてるつもりで、何も分かって無かったんだね…」


なんで花乃が謝るの?
大きな瞳に涙を溜めて謝る花乃の言葉を、明美が遮った。


「花乃!なんであんたが謝ってるんや!思いっきりひっぱたいたれ!」


怒りに燃える瞳は、反対に僕の気持ちを落ち着けてくれた。

那月にすら、あんまり怒って貰えなかった性で、罪悪感に押し潰されそうだったんだと気付く。


「桜介、あんたアホか?
何が居場所が欲しいや!惚れた相手にそんだけ思われとって他に何がいるんや!甘ったれんな!」


「あ、明美ちゃん?」


「好きあった相手が隣に居てくれるんは、当たり前やないんやで?
うちはもう会うことも叶わんのや! !」