花色の月


桐の間から板場に向かう途中、不満げな顔をした桜ちゃんに捕まった。


「ねぇ、花乃には僕がいらないの?」


「ぇ…?」


「那月が居れば、僕はいらない?用済みって事?」


明らかに怒っている桜ちゃんは、あたしには理解出来ない事を言う。

当惑して桜ちゃんを見つめていると、今度は寂しげにつぶやいた。


「ごめん……分かってるけどさ、なんか捨てられるみたいな気がしたんだよね…」


「あたし…桜ちゃんの言ってる意味が分かんない」


「だって、那月が側にいるから、僕の助けはいらないんだろ?だから…」


「桜介っ!」


目の前が涙で霞んだ時、怒鳴るような知花さまの声がした。


「なんだ、聞いてたの?
だって事実じゃん、僕を追い出したいんでしょ?」


桜ちゃんの言葉に、心が引き裂かれるように痛んだ。

あたしは、どこで間違ったんだろう…
良かれと思った事が、桜ちゃんを傷付けてしまうなんて…


無言で近付いて来た知花さまが、腕を振り上げた時、反射的に体が前に動いた。