花色の月


「ぁ…あれ?…那月さ…ん?」


「動かないで下さい。
あの女に付けられた傷が、どうなっているのか見るだけですから。…たぶん」


跪いて、あたしの服のボタンを開けていきながら、小さく最後に付け加えた言葉が引っ掛かる。


「あぁ…だいぶ綺麗になりましたね。
ここと、ここはなかなか消えないみたいですが」


那月さんが、するりとアザの上を撫でていく。
体がピクリと跳ねそうになるのを、必死に堪えた。


「花乃……そんな可愛い反応をされたら、私も男ですから理性が崩れそうですよ」


「崩れていいよって…言ったら?」


驚いたように見開かれた瞳には、緊張したあたしが映っている。

それでも、そんな顔をしていたのは一瞬で、直ぐに柔らかな微笑みを浮かべた。



「もう少し、心が通ったばかりのこの気持ちを大切にしましょう。
焦らなくても、花乃は居なくならないでしょう?私は花乃を大切にしたい」


「…うん」


今更ながら、時計を巻き戻して先ほどの自分をひっぱたきたくなった。


「でも、とんでもない破壊力ですね。
一瞬本気で押し倒そうかと思いました」


そう言って近付いてくる那月さんの瞳を見て驚いた。

確かに欲の色を押し込めていたから。

でも、その後は甘い口付けにとろけそうになって、何も考えられなくなった…