花色の月


夕闇に目が慣れてくると、そろそろとだけど歩く事が出来る。

…懐中電灯を持ってくればいいんだけど、何だかこの森で懐中電灯を付けるのは無粋な気がしたから持ってこなかった。

提灯なら良いかも知れないけど…


その時、すぐ側の足元から可愛い鳴き声が聞こえた。



「楓ちゃん…?」


暗闇の中にポツンと座るのは、ストロベリーブロンドの小さな猫。

近づいて抱き上げると、以前は無かった物が指先に触れた。

赤いちりめんのリボンに付けられた金色の鈴が、チリンと涼しげな音を立てる。



「楓ちゃんは宵っ張りなのね。
ちっちゃい子はもう寝んねの時間だよ?」


耳の裏をくすぐると、あたしの手に頭をすり付けるようにして、ゴロゴロと喉を鳴らす。

抱いたまま歩き出すと、今度はピョンと飛び下りてあたしの前を案内するように歩きだした。


「一緒に行ってくれる?」


「ミャア」


返事をするように鳴く楓ちゃんの後ろを、さっきよりも軽い足取りで着いていった。

旅は道連れって言うものね。
…旅じゃないけど。


時々石ころでつまずいたり、湿った苔で滑りながら如月窯を目指す。

…那月さんは、なんでこんな道を雪駄でスタスタ歩けるんだろ…