知花さまは、桜ちゃんの恋人だから。
あたしから桜ちゃんを奪って、外の世界に連れ出した人だから。
まぁ…奪って言うより、あたしの前から連れ去ったっていう方が正しいかもしれない。
…別に……あたしと付き合ってた訳じゃないし…
って言うか、妹としか見られて無いんだもん。
「花乃…?」
「ぇ……」
「はい、薬」
ぼーっとしてる間に、あたしの目の前には粉薬と水の入ったグラスが差し出されていた。
あっ
「知花さま、手っ!」
頬の青あざも痛々しいけれど、この人は素手で鉄瓶を掴んだ筈だ。
手のひらを火傷してるっ!
いきなりあたしが手を掴んだから、知花さまも桜ちゃんも驚いたようだ。
でも、それどころじゃない!
「…あれ?」
「鉄瓶かぁ?
あの一瞬くらいなら、なんて事ねぇぞ?」
……一瞬って言ったって、火鉢に掛かってた鉄瓶だよ?
鷲掴みにしたのに何とも無いって…どういう事よ…
