花色の月


「おっ?やっと帰ったかぁ」


一人で食うのは何だか侘しいなぁ…
と、なっちゃんに拐われるまで、桜介が座っていた場所を眺めたその時

やっと桜介が帰ってきた。


武さんに頼んで残しておいて貰った飯を並べながら、桜介に箸を渡す。

縁側から入ると、ぼんやりしたまま手にした箸を眺める桜介の瞳には、俺の姿なんて映っていないようで気に食わない。


「食わねぇなら、続きでもするかぁ?」


「たっ、食べるよ!ゆべしだけじゃお腹に貯まんない」


「ずりぃなぁ。なっちゃんの丸ゆべしなら土産に持ってこいよ」


桜介の格好からすると、土産は無さそうだ。

なっちゃんの作る丸ゆべしは師匠直伝の逸品で、俺だって好物なのになぁ…

因みに、俺は習得出来なかった。



「…なんかさ、結局焚き付けちゃった」


「いんじゃねぇかぁ?桜介が言わなかったら、俺が蹴飛ばしに行ってたぞ」


「何言ってんのさ。
十夢に那月を蹴飛ばせる訳ないじゃん」


…まぁ、勇気を出せば出来んじゃねぇかなぁ?

だが、ニッコリと威圧感たっぷりに笑うなっちゃんを思い浮かべて、背筋に寒気が走ったのは黙っておこう。