花色の月


「花乃と、食べたいんでしょ?」


分かってますよーだ。

てか、失礼だよね。
僕の向こうに花乃を見ようとしてるのを、隠そうともしない。

…もしかして、花乃は十夢で同じことを思ったのかな?だとしたら申し訳ない…


「…花乃は、元気ですか?」


「頑張ってるけど、かなり疲れてるよ。
十夢のアホが抱き締めたくなったって」


僕の言葉を聞いた途端、那月から大量の殺気が膨れ上がった。

…間違いなく、十夢に向けて。


「てかさ、なんで自分で電話したりしないの?それに、あそこまで来たら花乃の部屋は後ちょっとだよ?」


小桜の間で、僕達に嫌がらせの咳払いなんてしてる暇があったら、さっさと花乃の部屋まで行ったらいいと思う。

まぁ、花乃は忙しいから部屋に居るとは限らないけどね。


「行ったんですけどね、居なかったので引き返して来たんです」


「はぁ?」


「それで、イチャ付いてるお二人が見えたので、腹いせに意地悪をしてみました」


にっこりと笑みを浮かべながら、サラリと髪の毛をかきあげた。

嫌がらせだったと……


「それだけ?」


「……それだけですよ」


嘘つけ、それだったらここまで僕を連れてくる必要は無いでしょ?

話し相手が欲しいなら、十夢のが適任だと思うしね。




「あっそ、なら僕帰るから」


冷めてしまった玄米茶を飲み干すと、さっさとスニーカーに足を突っ込んだ。