花色の月


十夢から引き離されて、着流し男と山道を歩いている。

なんで、この道を草履でスタスタ歩けるのか知りたいよ。どんどん置いてかれてるんだけど…


「ねぇ、人を呼んどいてそれは無いんじゃない?」


「ぁ…あぁ、すみません」


よっぽど思い詰めていたのは、こちらを振り向くと歩調を緩めた。

まったく…こいつにしろ、十夢にしろ歩幅が広くて嫌になるよ。

思い詰めてる内容は、どうせ僕の可愛い従妹の事だろうね。


「…何にしますか?」


座布団の上に座った僕に、湯呑みを持ち上げながら聞く。


「玄米茶と、丸ゆべし」


「……やれやれ、なんで知ってるんですか?」


「毎年作ってんでしょ?」


こいつの作る丸ゆべしはなかなかの物で、ここに来るたび僕は狙っている。

今日は断れないみたいだね?
こんな時に我が儘しておかないとね。


「はい、どうぞ」


小さめの菓子皿に乗せられたゆべしは、僕に食べてくれと言ってるみたい。


「ん~……うまぁ」


これだったら、いくらでも食べられるなぁ。

那月は、僕の目線に気が付いたのか残りをさっさと片付けてしまった。


「ダメですよ。残りは……」