花色の月


「……コホン」


明らかにわざとらしい咳払いに、障子も閉めていなかった窓の方に目をやった。


「お取り込み中すみませんが、ちょっと良いですか?」


「いくねぇなぁ?見りゃあ分かるだろぉ?」


着流しの袂に手を入れて腕を組むなっちゃんは、相変わらず別嬪さんだ。

だがな、俺は今から食事の時間なんだ。
もちろん喰うのは桜介だ。


「あぁ、ちなみに用があるのは、そこで呆けてる花乃の従兄になんですが」


「ほ、呆けてなんかない!!」


「それは良かったです。少し借りても?」


どもる桜介に、おざなりな返事をして、なっちゃんは俺に確認を取った。

…なっちゃん、その目は聞いてねぇよ?
俺に決定権は無いってか……


「ったく、何なのさ…」


「すみませんね。でも、十夢とイチャイチャするのは、これからいつでも出来るでしょう?」


「…花乃はあげないよ?」


「家まで行きませんか?」


だーかーら……
なっちゃん、それは聞いてねぇよ?

桜介は、巻くれあがった服を下ろしながら、不満げに唇を尖らせた。

……そんな顔すんなって。



「早く行きましょう。
十夢が野獣の顔をしています」


「否定は…しないかな」


二人揃って失礼だなぁ?
まぁ、俺も否定はしねぇけどなぁ。