花色の月


「…ん……」



ズキズキしない方の手にぬくもりがある。

それを辿るようにして浮上した意識で、ぼんやりと今の状況を分析しようとしていた。



「花乃!大丈夫?苦しくない?痛くない?」



矢継ぎ早に聞いてくる桜ちゃんは、心底心配そうで何だか嬉しいと思ってしまうあたしは、どっかおかしいのかもしれない。




「……だい…じょ…ぶ」


火傷が、づくんづくんと痛むけれど…




「ごめんなぁ」



あぁ、知花さまも居たんだね。
なんか来る早々とんでもないおもてなししちゃって申し訳ない…



「…知花さまは…悪くないです。
…ご迷惑おかけして…申し訳ありません……」



あっ、知花さまの頬には青黒くなり始めた跡がある。

…どうしよう……



「十夢って呼んでくれると有りがたいかな」



「…いえ」



それは出来ません。
お客様って言う距離をとって置かないと、あたしの心が持たないから…



「じゃあせめて『さん』にしてくれねぇか?」



苦笑すると、グレーの瞳で覗き込んできた。



「ごめんなぁ?
傷残ったら嫁に貰ってやるから」



「…は?」



「あほ。十夢の毒牙にかけるくらいなら、僕が嫁にするから」



痛い、胸が痛いよ……


大好きな桜ちゃんに言われて
嬉しいのに、すごく悲しい…


二人とも、そんなつもりこれっぽっちも無いくせに。




だって